96個目の山、甲武信ヶ岳を踏破してきた。土曜の15時に家を出て、東北・首都高・中央と高速を繋ぎ、登山口となる西沢渓谷の道の駅みとみに着いた時には19時を回っていた。どこかで美味しい夕飯をと思っていたが適当な店もなく、コンビニ弁当とチュウハイで夕食とし、いつものように車中泊ベットに潜り込んだ。余談だが、最近はこのペットの寝心地が一番良くなってしまった。習慣とは恐ろしいものだwww 23時過ぎに起き出し、身支度を整え、まだ日の変わらない内(23時42分)に車道に出た。


頭と手持ちのライトで行く手を照らすが何とも心もとない。近くで気配がする。どうもサルのようなのだが、それと分かるまでは自然と足早になる。すると前方から3台のクルマがスピードを出して向かってくる。減速しながら走り去ってくエンジン音には、「今度は俺がサルになったな」とほくそ笑む。R140のループ橋をくぐり、ゲートを抜け西沢渓谷の遊歩道に入ると、いよいよ辺りは真っ暗となり沢音だけなる。こっちは熊鈴とラジオで対抗だ。近丸新道の登山口をスルーしヌク沢の橋を渡ると、右側に近丸新道のそれとは明らかに違う徳ちゃん新道の案内板を見つけた。ここから木賊山までは一気に1300mを上げるわけで、未体験ゾーンへの突入に自然と力が入る。最初の緩やかな勾配も、直ぐに急な登りとなる。ライトの明かりだけなので、周囲の状況はほとんど分からないのだが、尾根筋に沿って登山道は作られているようだ。急勾配の九十九折り、背丈を越えるシノ笹の壁、シャクナゲのトンネル、カラマツ林の張り出した根、岩場の痩せ尾根等々が、所々に平坦地を挟みながら続いている。これを一人で切り開いたという甲武信小屋の御主人(徳ちゃん)の大変さを思いながらの登坂だった。1時間20分で徳ちゃん新道を登り切り、近丸新道と合流したが、その間に案内板らしきものは見当たらなかったが、特に先を迷うこともなく歩き易かった。ここがほぼ中間地点で、この先も急な尾根歩きは続いたが気が付くと県境尾根の縦走路となり、ほどなく木賊山山頂となった。空はほんのり白みだしているがまだ真っ暗な山頂だ。無線機をオンにするが、夜中の3時過ぎ、流石に静かだ... 長めのCQを繰り返す。やっとのことで足利の局(JL1XVO)が拾ってくれた。感謝である。写真左は徳ちゃん新道口、中央は徳ちゃん新道と近丸新道の分岐、右は木賊山山頂


木賊山からは所々に残雪があるが、気にするほどでもなく、急勾配を80m近く下げると鞍部となり甲武信小屋となった。まだ4時前だけど、小屋の前では誰かが仕事をしているようだ。幕営地にも沢山のテントがある。熊鈴とラジオの音を落とし、静かに通り過ぎた。白みだした空との陰影で切り立って見えた甲武信ヶ岳も、尾根筋に九十九の登山道が刻まれていてそれほどきつくもない。ケルンの積まれた岩場に出ると、いよいよ甲武信ヶ岳山頂だ。まだ夜明け前だけど、東の空は朝焼けで赤く染まり出している。先客が3人、小屋から御来光を見るために上がってきていた。そのうちに、ぞろぞろと上がってくる。ここで一考。まさか夜明け前にピークに立てるとは思わなかったので、オプションとして計画していた三宝山をピストンすることにした。そうなれば長居は無用と、軽井沢の移動局とコンタクトし先に向かった。写真左は甲武信ヶ岳山頂の日本百名山標柱、中央は山頂からの日の出直前の朝焼け、右は山頂からの下り


甲武信ヶ岳から三宝山までは木賊山までの距離よりは少し遠いが、高低差は半分ぐらいなので楽な行程だった。三宝山の頂部は広く、眺めも良さそうだ。甲武信ヶ岳には無かった三角点標石もあるし標高だって8mも高い。だけど、甲武信ヶ岳は日本百名山...名前負けかな。三宝山も良い名前なんだけどなwww 僕の休憩はピークのみで、その時間は無線の交信相手次第ということになる。ここでもちょっとばかり手古摺り20分間のロング休憩となった。ここでは阿見町の局(JF1EJD)がピックアップしてくれた。再び大感謝である。この時間となるとすっかり夜も明け、登り来た甲武信ヶ岳や木賊山の稜線が見えてくる。さらには甲武信ヶ岳のピーク越しに富士山も見えてきた(この日見ることが出来たのは唯一このポイントだけだった)。写真左は三宝山山頂、中央は登り来た甲武信ヶ岳と木賊山、遠方には富士山、右は鞍部付近の残雪


ここからは往路を戻り、甲武信ヶ岳、甲武信小屋、木賊山の巻き道と進んだが、この日一番の難所はこの後やってきた。破風山までの300mの下りで脚の疲れはピークとなり、200mの登り返しでは太腿の裏側が脚を上げるたびに痛む。勾配が急なだけではなく、小岩がゴロゴロしていて歩幅がバラツクことが余計に脚に負担をかける。破風山避難小屋から喘ぐこと35分、やっとのことで破風山山頂となった。ここで山ランの主宰者・JA1JCA局と繋がった。いろいろ話してるうちに、次の東破風も有効だと聞き息を吹き返した。さらに雁坂峠の先の水晶山も楽にピストンできるとのことだ。地図を広げてみるとその先の古礼山にも足を伸ばせそうだ。そうと決まったら現金なものだ。平べったい石が雑に積み重なり歩き難い尾根筋を進むとほどなく東破風となる。写真左は甲武信ヶ岳から見た山梨長野県境の山並、中央は木賊山からこれから向かう破風山~雁坂嶺、右は破風山避難小屋と破風山


ここから雁坂嶺は高低差100m余りの登り返しとなるが、勾配は緩やかですんなり雁坂嶺山頂となった。まだ8時を少し回ったばかりなので時間的には余裕はあるものの、行程を伸ばすことになったことで一抹の不安もあり先を急いだ。順調に下り、雁坂峠が眼下に見えてくるようになるが、その先の水晶山はガスの中で見えなくなっていた。雁坂峠には日本三大峠との案内とともに登山案内板がある。これを見れば古礼山の先に燕山というピークがあり、その先の雁峠から広瀬方面に下れば、R140で道の駅みとみに周回出来ることわかった。そうと決まればあとは体力勝負ということになるが、高度を下げながらのピークハントとなるので、水晶山、古礼山と順調に辿った。あっそうそう、水晶山では南アルプス市の裸山で移動運用中の山ラン仲間・JP2OMY局と思いがけず初コンタクトすることが出来た。古礼山の先の燕山は古い山名板の下がるシャクナゲに覆われた小さなピークだったが、もしものことを考え山梨コンテスト参加局とコンテストナンバーを交換した(帰宅後有効であることを確認しほくそ笑むw)。ここから雁峠までの下りでは、シャクナゲやアカヤシオが見頃となっていた。さらには一か月前(5/16)に登った笠取山が雁峠越しに美しい姿を見せてくれた。しかし雁峠からは沢に沿って下ることになるのだが、度々渡渉を繰り返すことになり、やがては沢から川となり、川沿いの廃道歩きは疲労困憊の足には退屈なものになった。雁峠から2時間でようやく道の駅みとみに戻り着き、計13時間、30kmに及ぶハードな山行のゴールを迎えた。写真左は雁坂峠とガスがかかった水晶山、中央は水晶山付近のシャクナゲ、右は雁峠と笠取山北西面の笹原

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