五十里湖の北側には三依と湯西川の間に横瀬山、持丸山、高瀬山、白倉山の4つの山がある。地図を見てみるとこれらの山は尾根続きなので縦走が出来るのではないかとネット上を探った。ルートや時期は異なるが、いくつかの縦走や周回の記録があったが、そのいずれにも共通していたのは密藪の存在だった。ただ高低差はそれほどないので、上手く繋げば縦走も可能とふんで白倉山から高瀬山、持丸山、横瀬山と辿るルートを考えた。次はどちらから側から取り付くかということだが、横瀬山からの下山とした場合は湯西川ダム建設工事に伴い湯西川沿いは伐採が進んでいるのでポイントを見つけ難いと判断した。さらには藪が濃いとされている1312P前後を体力のあるうちに突破したいと考え横瀬山から取り付くことにした。そこで白倉山の下山口にバイクをデポし、横瀬山の取り付き地点として想定した湯西川・赤下に向かった。赤下地区はダム本体に近く現場事務所が林立している。赤下沢近くには湯西川を渡る橋があったが、ゲートがあり関係者以外通行不可との案内がある。まだ5時前で薄暗い中を辺りを探すと、赤下の現場事務所の先に県道が広くなった所がありクルマを停めた。その前から川岸に下りると、対岸には作業道路と伐採地越しに125号鉄塔が見えた。この鉄塔の建つ尾根筋は横瀬山へと続いている。


明るくなってきた空を見ると、厚い雲が西から東へと足早に流れポツンポツンと雨粒が落ち始めてる。関東以北では大雨との予報だが、日中は曇りとの予報に期待し5時過ぎに出発した。通行止めの橋を渡るのも気が引け、渡渉ポイントを探し川岸に降りた。登山道のない藪山歩きはいつもスパイク付き長靴を使っているので渡渉はお手の物である。浅瀬を選び難なく対岸へ渡ると工事用道路となり、鉄塔への尾根筋は跡形もなく伐採されている。ブルドーザーのキャタピラ跡を上がると鉄塔巡視路となり尾根上に出た。尾根筋はほどほどの勾配で20分で125号鉄塔となり、その後も快調な歩きが続いた。800級を過ぎた辺りからは徐々に勾配を増してくるが、踏み跡は続いているので問題はない。山頂に近付くにつれて笹丈が増してきて、今日一日の藪歩きが前途多難なものになることが容易に想定できた。登りつめた横瀬山山頂は雑木に囲まれた平坦地で視界はない。写真左は湯西川の渡渉点、中央は横瀬山手前の笹薮、右は横瀬山


ここから持丸山へ至る尾根筋が本日の核心部となり、不安と期待が半ば拮抗しながら踏みだした。最初はミヤコザサが主体で笹丈も膝下くらいだが、鞍部を過ぎると徐々に背丈を増しその分踏み跡も薄くなる。地図上の破線に一致する道型は全くなく、獣道を拾いながらの藪漕ぎとなった。あっという間に笹はネマガリタケ(チシマザサ)が主体となり、広い尾根上一帯を占領し始めた。とは言っても、植生は様々で背丈の低い幼木のところもあれば、3m近いものが密生するところもある。直立しているところもあれば、寝ているところもある。なるべく尾根筋を外さぬよう獣道を拾いながら前進した。それでも頻繁に足止めを食う。理由は倒れたネマガリタケが行く手を塞ぐことと、背丈が高くて視界が遮られて方向を見失ってしまうためだ。それでも漕ぎ続ければいつかはここから抜けられると必死で歩いた。左前方の木立の間から持丸山が見えだすと、急勾配となるがひと登りで1312Pとなった。横瀬山をスタートしてから1時間30分後だった。ここから持丸山への尾根筋は薄いが踏み跡もあり、笹丈も低くなったため歩きやすい。ピーク手前の上りで再びネマガリタケとなるが、密度は薄くほどなく持丸山となった。ここは2度目となるが、ルートが違うためか景色が違って見える。写真左はネマガリタケの中、中央は頭の上から前方のネマガリタケを見たところ、右は持丸山


次の高瀬山へは1312Pへ戻り、東へ向かう尾根に乗ることになる。ここからの下りは急勾配でネマガリタケの密藪となってはいたが、ちょっとばかり今までとは様相が違っていた。道型がはっきりしている上にネマガリタケが被っていないので、ほとんど漕ぐ必要がないのだ。あっという間に鉄塔巡視路となり、直後に116号となった。ところがここから状況は一変する。笹丈が増し密度が濃くなるに従い踏み跡は薄くなり、おまけに雨も降りだしたのだ。この尾根筋は1312Pの前後だけが密藪だと思っていだが、予想に反しこれから向かう1240Pの手前から高瀬山への尾根筋も半端ではないことに気づくのである。特にネマガリタケの密藪は1240Pから高瀬山への中間点までが酷く、1312P・横瀬山間に匹敵する程であった。それでも高瀬山に近づくにつれて笹丈は低くなり、持丸山から2時間弱でピークとなった。ここも雑木に囲まれた平坦な山頂で展望はなく、三角点の他に山部さんと栃木の山紀行さんの山名板がそれを示していた。写真左は1312Pからのネマガリ藪だが道型が通っている、中央は僅か50m程の鉄塔巡視路でここだけは快適だった、右は高瀬山


降り続く雨で全身びしょ濡れとなるが、足元がしっかりしているせいか意外と元気だ。4山目の白倉山へは1240Pまで戻らなければならず、覚悟の密藪再突入となったが案の定、1240P手前の上りに差し掛かるとネマガリタケの密度は半端ではなくかなり手古摺ることになった。結果として白倉山への分岐をあせり早めに尾根筋を外れてしまったため、ネマガリタケの斜面を少しばかり登り返しすことになってしまった。どうにか北東への尾根筋に乗ると急勾配の下りとなったが踏み跡は続いている。1104Pで方向を東に変えるがこの辺りの尾根筋はミヤコザサの植生となっていた。さらに白倉山までは小さなピークを一つ越えるが総じて平坦な尾根歩きとなるが、所々では背丈ほどの笹薮にも遭遇した。1240pから小一時間で小丘状の白倉山山頂となった。あとは下山口まで下りるだけだが、近づくほどに勾配は急となり最後は落ちるように道路に降り立った。左は白倉山、右は急勾配の白倉山の下山口(取り付き点)

4山を結ぶ尾根筋にはテープ類のマーキングは少なく、横瀬山~1312P間にはほとんどない。1240P~高瀬山間にも数えるほどであった。尾根筋にはっきりした道型はなく、獣道をベースとした薄い踏み跡があるのみである。肝心なネマガリタケの密藪は、1312P南東尾根と1240P南尾根では、1312P南東尾根の方が距離が長い分手強いが、1240P南尾根もかなりのものだった。

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