先週の木曜日、飯盛山から鬼面山への縦走を狙ったが、積雪と強風に阻まれ飯盛山までで時間切れ撤退となった。今日は再チャレンジし見事リベンジしてきた。今回のルートは中ノ大倉尾根から毘沙門沢源頭部近くに降り、渡渉後に北東尾根から山頂を目指すものだ。ネットで調べてみると、飯盛山から鞍部に降り南東尾根をつめるものと、峠の茶屋から明礬沢源頭部を巻くように登り朝日岳から続く北西尾根を辿るもので、いづれも無雪期のもので強烈な藪との格闘が必須とのことだ。この一週間ぼんやりと地図を眺めていたら、北東尾根は等高線の間隔が広く、中ノ大倉尾根から毘沙門沢に降りられればどうにかなるように思えた。


夜明けとともに北温泉の駐車場をスタートしたが、先週の雪は消え北温泉までは順調だ。天気予報は曇りだが、雲間からは青空が顔を覗かしている。先週は新雪のためスノーシューで登った北温泉からの急登にもほとんで雪は無い。それでも中ノ大倉尾根に出ると雪原となっていたが、気温の低下もあり雪面は硬く締まり歩きやすい。それでも中ノ大蔵山のトラバース道となると、斜面から押し出された雪で道は塞がれてしまっていた。ここでアイゼンの出番となるが、アイスバーン同然の雪面では抜群のグリップ力で急勾配もさくさくと歩けてしまう。スキー場への分岐近くなると尾根は広くなり、歩きやすさも手伝い、毘沙門沢への下降ポイントを探すべく稜線を離れて歩くようになった。少しでも最短で下りたいとの思いからなのだが、結局は急傾斜や窪地の吹き溜まりで足止めを食らい進めなくなってしまう。そんなことを数回繰り返したあげく、やっぱり尾根歩きがベターだと気付くw 下降ポイントを探りながら進むと目指す鬼面山の北東尾根が次第に正面にとらえられるようになってきた。写真左は中ノ大倉尾根上に一週間前の自分のトレースもあるのかな、中央はトラバース路を埋め尽くした雪、右は木立の間から見える飯盛山から鬼面山で稜線の先には茶臼岳も


さぁーーいよいよ勝負である。毘沙門沢まで降りられるだろうか。どこを見ても傾斜は急だ。無雪期だったら下りたいなんて思わないような笹や灌木が密集してるのだろうけど、今はそのほとんどが雪の下なのだ。それに雪も硬く締まっていて踏み抜くことは無い。意を決して傾斜に足を落とした。いける。踵を雪面に打ち込むように一歩一歩下る。勾配は増すがしっかりグリップする。ところどころで立ち木で減速し、次のラインを定め再び下る。あっという間に100mを下りきり毘沙門沢に来た。流れは速いが水量は左程じゃない。難なく渡渉できた。が、思いもよらず沢の先には雪壁が立ちはだかり、上部からは小さいが雪庇まで突き出しているのだ。左右を見ても適当なルートは見いだせない。ここさえ越えればと、一か八か取り付いた。つま先のアイゼンを打ち込み、両手で重心を支えながら体を持ち上げる。雪庇は立ち木に掴まりどうにか乗越えた。写真左は鬼面山の北東尾根を正面に捉えたところでここを下降した、中央は毘沙門沢の渡渉地点、右は渡渉直後の壁でウサギの足跡を追って取り付いた


次は北東尾根への取り付きだが、なるべく傾斜の緩いところを見つけて登るが、尾根上に出る直下では雪庇がせり出していた。ここでも立ち木を利用し雪庇をクリアすると、圧巻の景観が待っていた。尾根は広い雪原となり、前方には朝日岳、その左には茶臼岳、右には熊見曽根分岐~スダレ山が一望できる。雪の下はたぶん笹原か背の低いツツジ類の灌木なのだろうが、そんなことは全然感じられない一面の雪面となっている。しばし朝日岳を正面にとらえながら進むと、山頂へ続く尾根となり針路を左に変えた。すると前方には背丈ほどの変形したツツジ類が徐々に増えてきて行く手を邪魔するが、膝丈ほどの灌木類は雪の下で大人しくしているようで、硬い雪面を探して歩けば問題ない。それにしてもこの山頂尾根は広過ぎるw 最初に目に付いたのは南西側のケルン状の石積みだった。行ってみると東側の方が高そうで、その中心に小岩が顔を出しているのを見つけた。 小岩の上に立ってみると、正にここが最高点である。目視ではあるがここより高いところは無い。しかし何の標も見当たらない。確か先人達の山名板があるはずだが雪の下なのだろうか見つけることは出来ない。この地点が最高点であることを確信しつつ、携帯食を取り出し、全方位の冬の那須岳の絶景を楽しませてもらいながら腹ごしらえの時間とした。写真左は北東尾根直下にせり出した雪庇でこの横を這い上がる、2番目は北東尾根から朝日岳が1816前峰越しにピークが顔を覗かしている、3番目は山頂に向かうとケルンが見える、4番目は山頂南端からで飯盛山と北温泉が見える、5番目はピークの小岩と朝日岳、6番目は茶臼岳~剣ヶ峰から朝日岳


戻りは自分のトレースを辿ったが、途中の急傾斜地でスリップし3m位落ち、つま先のアイゼンで止まった時には流石に肝を冷やすこととなった。まさに滑落一歩手前で、一息ついて現場を見てみると下部は深い切れ込みとなっており、事故と紙一重の一瞬だったと気付かされた時には恐怖心に包まれていた。それからはより慎重な下山となったが、毘沙門沢から中ノ大倉尾根への登り返しは、その勾配がゆえに強烈なものとなったのだが硬い雪面に助けられ直登することが出来た。中ノ大倉尾根は快適に下り、トラバース路へは分岐せずスキー場トップに向かい、ゴンドラ山頂駅近くの中ノ大蔵山を目指した。ここには三角点があるが、山名板は無く、展望台だけが設置されていた。しばし那須岳の展望を楽しんだ後は足早に北温泉駐車場に戻った。写真左は中ノ大倉尾根からの朝日岳~熊見曾根~スダレ山~前岳、中央と右は中ノ大蔵山から見た那須岳の絶景

「近くて遠い山」
これがこの2週に渡る飯盛山・鬼面山山行での偽らざる実感となった。 

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