栃木百名山の中で「最も深くて遠い山」、そんな形容詞がぴったり当てはまる山がこの大佐飛山だということを再認識させられた。昨年の10月に無雪期の大佐飛山を塩那道路を使いひょうたん峠から登ったが、またその時と同じくらい達成感のあるルートだった。


登山口は中高年の山登りと温泉さんのホームページを見て、林道巻川線にあるブラブラ梯子登山口からおおよそ1km弱進んだ新しい登山口からと上がることにして24時過ぎに家を出た。1時半に登山口に着き、同行するH先生を待ち車中で仮眠した。4時半に目覚ましで起きだしコンビニ弁当を食べながら身支度を始めた。まもなくH先生が到着し4時55分、薄明かりの中を登山口の梯子に取り付いた。スギ林の中を稜線伝いに登るのだが、傾斜はきつく先行のH先生に付いていくのがやっとで、20分に稜線上の登山道に合流した時には青息吐息状態で3度ばかり吐いてしまった。東京マラソン後の体調不良が原因だ。相変わらず右アキレス腱も痛いw それでもルート上に雪は全くないが、三石山手前位からはところどころに雪がでてきた。サル山手前で雪が多くなり、アイゼンを装着し夏道からは離れて本格的な雪庇歩きとなる。初めて着けるアイゼンは思っていたよりも快適だった。


それでも足は重くてペースは上がらないのだが、夏山とはまるっきり違う景色が背中を押してくれる。写真左は山藤山手前の急傾斜地で積雪はたぶん50cm位だろう。時々踏み抜くことはあるけどどこでも自由にトレースを描けるので夏道よりは自由度が高い分ルートを外れる心配もあるかもしれない。中央の写真は河下山から見た黒滝山で、ここから10分後の7時59分に黒滝山に到着した。黒滝山山頂は雪はなく三角点が顔を覗かしていた。3時間かけてやっとのことで行程の半分を来たことになるが、ここから大佐飛山までは高低差約150mということで長丁場ではあるが、アップダウンはそれほどでもないだろうと自分に言い聞かせ、10分の休憩で次の西村山に向かった。


ここから西村山へは何本かのトレースがあったが紫色のテープのガイドで先を目指した。30分で西村山に着いたが、この前後は踏み抜きが多くてかなり手こずった。写真左は西村山から続く雪庇越しに見える大長山で、写真中央は進行右手に見える那須連山でちょうど大峠の位置に甲子旭岳が見える。写真右は稜線左側に見える山並みで奥に高原山、その手前に鉄塔のあるのが弥太郎山、中央には小佐飛山から長者岳へ連なる峰々が横たわって見える。


大長山を少し下ると突然視界が開け、目の前には目的の大佐飛山が飛び込んできた。見覚えのある景色だ。左側の写真だが、誰もがこの場所からの大佐飛山をホームページに掲載していると言っていいほどのお約束のアングルに遭遇したのだった。ここからの1時間は常に大佐飛山を眼前に捉えながらのルートとなるのだけど、疲労はいよいよ極限となり思うように足が上がらなくなってきた。それでも360度の絶景は嫌をなしに僕を大佐飛山に導いてくれた。10時42分、スタートから5時間47分でやっとのことで山頂に着いた。ちょうど半年前の10月12日に同じ場所に立っていたのだけど、はるか上にあった中高年の山登りと温泉さんの設置した山名板は手の届く位置にあり、山部さんの山名板は足元の雪を掘り返したら顔を見せてくれた。ここの標高は1908mなので夏よりは間違いなく2mは高い1910mに立っていたことになる。この日は日差しも強く、風もほとんどなかったので気温は15度位はあったと思う。ツェルトを広げ、ゆっくりと腰を下ろすと、お湯を沸かし粉末のコーンポタージュを放り込んだ。おにぎりとスープで空腹を満たしたが、あまりの疲れのためか食欲がない。50分間といつもの僕たちとしてはちょっと長めの休憩をとり、11時30分に山頂を後にして帰路についた。


戻りはとても順調とは言えず、スピードが上がらない。両足の腿がパンパンになり壊れる寸前だw それでも休んでしまうと動かなくなりそうなので、ゆっくりと歩を進めた。帰路で一番辛く感じた所は、踏み抜きが頻繁に起こった西村山の前後で、中間点の黒滝山を過ぎてからは、疲れはピークだったけど下りが主体だったのでどうにか持ちこたえることができた。三石山から少し下ったところでカタクリの花を見つけ写真に収めた。その後も忠実に軌跡を辿り登山口に戻ったのは16時15分だった。厳しい山行だったけど、どうにか残雪期の大佐飛山を体験することができました。同伴してくれたH先生に感謝です。本当にありがとうございました。

登山口(4:55)→黒滝山(7:59-8:10)→大佐飛山(10:42-11:31)→黒滝山(13:50-13:58)→登山口(16:15) 全行程:11時間30分(往路:5時間47分、復路:4時間44分) GARMINデータより 距離:17.50km 従来のぶらぶら梯子からのルートを黄色の線で描いたが、僕の足だと10分間の短縮だった。