孫兵衛山を何処から登ろうか検討していたが、黒岩山の山ランが未ゲットだったので女夫渕温泉から黒沢林道を詰めて両山を周回することにした。前夜7時過ぎに横になったがルートのことを考えていると目が冴えて眠れない。仕方なくクルマに乗り出し女夫渕を目指した。23時、女夫渕の駐車場で2時に目覚ましをセットして横になった。


2時31分、ヘッ電と手持ちライトを持ちゲートを抜けた。直ぐに道路は荒れだし灌木と落石の連続となる。魚沢と合流した辺りから林道は残雪が多くなり、崩落地の雪面をトラバースするのでアイゼンを着けた。林道は荒廃が進み至る所で崩落し、崖上からは雪解け水が滝のように流れ落ち林道が滝壺のようになっているところもある。暗がりで足元も悪いし先の行程を考えのんびり歩くと、地形図の林道終点の位置から少しばかり先で林道は崩落によって沢底に落ちていた。高原山探訪さんの「女夫渕~引馬峠~孫兵衛山~黒岩山~鬼怒沼周回(2004年10月)」によれば、この先に黒沢第4号橋がありそこが尾根取り付きとある。目を凝らして辺りを見回すと、崩れ落ちた斜面に薄いが踏み跡らしきものがあり、その上部に残雪が続いていたのでアイゼンで足元を確保しながら慎重に進んだ。しばらく行くが崩落が酷くトラバースは諦め灌木に掴まりながら沢筋に降りた。丁度この辺りで夜明けを迎え、沢の上方にガードレールのあるコンクリート橋が見えてきた。写真左は切れ落ちた林道終点でその先の雪渓を歩いた、中央は沢筋から見上げた黒沢第4号橋、右は取り付いた斜面でネマガリタケ薮は薄い


勢い駆け上がり黒沢第4号橋を渡るがこの先に道型は無く、雪渓に沿ってコメツガの斜面を登るがネマガリタケは薄く気にならない。取り付きからほどなくの標高1450m辺りからは残雪が続くようになり、引馬峠を目指し急勾配の尾根筋を上がるが、足元からはカツカツとアイゼンがクラストした雪面を掴む小気味良い音が跳ね返ってくる。普段の山登りとは異次元の感覚だ。1781Pを左側に避け谷間を上がり、左からの尾根上の急勾配を一登りすると平五郎山から続く尾根筋との出合いとなるホーロク平となった。ここからは一度軽く高度を下げ、台倉高山から続く県境尾根の鞍部となる引馬峠にトラバース気味に上がった。写真左はホーロク平手前の急登、中央は引馬峠となる鞍部付近を見上げたところ、右は引馬峠付近

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引馬峠は平らな雪原となっていて、どこが峠筋かははっきりしないしそれらしき表示物も見当たらなかった。山部さんが探索した引馬峠水準点近くには名板が設置してあるということだったがこれも見つけられなかった。残念(´・ω・`;A) 孫兵衛山までは直線で2km余りだがその高低差は200mもなく、軽いアップダウンの県境尾根歩きで徐々に高度を上げた。孫兵衛山南峰が近付くと傾斜を増すのでややトラバース気味にピークに方向を換えると浅い鞍部となりほどなく山頂となった。オオシラビソの木立の中で山名板が一枚下がっていたが三角点は雪の下で確認できず、生憎のガスで展望も無い。写真左は県境尾根1915P手前の登り、中央は孫兵衛山山頂、右は孫兵衛山南峰の下りから見た黒岩山

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緩やかな山頂尾根を南峰に戻り、西に方向を換えると急勾配の下りとなる。手掛かりとなる立木もなくアイゼンの踵部を一歩毎打ち込みながら100m余りを下降すると傾斜も緩やかとなり緩やかな登りに転じる。県境尾根を北から吹き抜ける風は冷たく、この時点でも気温は氷点下で雪面は適度にクラストしている。この辺りからガスの切れ間に目指す黒岩山の北東ピークが見えだした。少しずつ勾配は増すが順調に歩き北東ピーク直下まで来たところで突然足が止まった。10m近くの壁が目の前に立ち塞がり行く手を遮っていた。左右に回り込む選択肢もあると思ったが、次の瞬間壁に取り付いている自分が居た。60度近くはあるだろう雪壁にアイゼンを打ち込み、シャクナゲの枝に必死に手を伸ばし体を持ち上げながら這い上がった。登り切れば達成感が支配するがレンズで見下ろす足元は震えてた。ここからは小さなアップダウンで山頂尾根を南進し、最後に急登すると黒岩山山頂となった。尖った珪化岩が雪面から顔を出しているだけの山頂は薮深き夏山の様相とは一変していた。曇り空で相変わらず遠望は利かないが、鬼怒沼山やその後方の燕巣山、その左手には根名草山から手白山への尾根筋が見えていた。写真左は黒岩山の北の肩近くから見た黒岩山ピーク、中央は黒岩山山頂に突き出た珪化岩、右は山名板と尾瀬方向

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黒岩山からは黒沼田代を抜け魚沢林道を下る予定を立てていた。夏道で邪魔をしたシャクナゲなどの灌木や多くの倒木は雪の下にあり、オオシラビソの疎林と化した斜面を黒沼田代に向かって下った。ほどなく黒沼田代となったが気温の上昇で踏み抜きが多くなりワカンに履き換えた。野球場2面ほどの黒沼田代を横断し東方向の広い尾根筋を快適に下り、標高1700mまで降りたところで尾根筋を離れ魚沢林道の方向に針路をかえた。尾根筋を切り通したところで林道へ降り立ち、残雪の残る林道を下った。ところがこの魚沢林道は至る所で崩落し、凡そ10mとまともな道は続かず危険箇所の連続となった。 この状況は黒沢林道との出合まで続いており既に林道の体は成してはいなかった。締めは沈下橋での黒沢渡渉となり、やっとのことで黒沢林道に復帰した。真っ暗い中よくもまあ―来たもんだというような悪路を戻り、全行程11時間余りの山行を終えた。写真左は黒沼田代から見た黒岩山、中央は下山尾根筋から見た孫兵衛山、右は崩落し道型を失った魚沢林道

IMGP4162IMGP4168110429孫兵衛山・黒岩山
写真左は黒沢林道出合いの沈下橋、中央は黒沢林道の崩落地で残雪の上に落石があり近々の崩落があった模様、その先では滝のように水が落ち林道は滝壺の様相


女夫渕黒沢林道ゲート(2:31)→黒沢第4号橋(4:45)→引馬峠(6:14)→孫兵衛山(7:16-7:30)→黒岩山(9:23-9:51)→魚沢林道出合い(11:22)→女夫渕黒沢林道ゲート(13:40)