今年のGWは雨ばっかりで残雪の山歩きはこの一回だけとなった。この時期は尾瀬戸倉から鳩待峠まで日中(6:00-18:00)に限りクルマで行くことができる。天気予報をチェックすると4日の片品村は晴れマークに変わり急追、3日18時過ぎに尾瀬戸倉に向かった。21時、ゲート前に一番乗りし明朝の開門を待ち車中泊を決め込んだ。4日5時、目覚めると尾瀬戸倉は快晴だ。喜び勇んで6時開門と共に鳩待峠に向かうと次第に様相は変化する。鳩待峠は小雨となっていたが好転するだろうと6時半、尾瀬ヶ原に向かった。しかし雨足は増し、1時間で撤退しクルマに戻った。9時を回ると雨は上がり青空も見えだしたので再スタートす。


与作岳(1933m、尾瀬ヶ原)、景鶴山などの群馬・新潟県境の山は尾瀬国立公園の中にあり、尾瀬側からは雪があるこの時期だけしか行くことが出来ない。鳩待峠を出て尾瀬ヶ原の南側の入口・山の鼻から神宮、ヨッピ橋、東電小屋と所々顔を出している木道を拾いながら雪原を行く。山の鼻を過ぎた辺りから再び雨となり、一時見えていた至仏山なども雲の中に沈んでしまった。東電小屋辺りではいよいよ本降りとなり雨具を着込む。東電小屋の裏手にトレースを見つけ、これを追うように斜面に取り付いた。ツェルトと雨具、着替えの防寒下着類、行動食と極力装備を抑え、これに水3.5Lをプラスしただけで背中は軽い。足元はいつもの通りオールマイティーのスパ長だ。1537P、1653Pと小ピークを越えて行くと、下山する6人パーティーと出合った。景鶴山山頂まで残り5m程の雪稜が危険と判断してピークを踏まず下山したとのことだった。急登を終えると進路は西へと向きを変え傾斜は緩くなり、ほどなく与作岳山頂となった。ピークは広く立木に下がるすかいさん製の山名板でそれと分かった。鳩待峠から4時間20分。写真左は竜宮からヨッピ橋方面を見たところ、中央は東電小屋の裏手からの取り付き、右は与作岳山頂


景鶴山(2004m、尾瀬ヶ原)へは広い尾根筋を緩やかに下げ、上ヨサク沢とケイズル沢の間の尾根筋と合わさると山頂直下となる。ここで先行者のトレースとケイズル沢方向からのトレースが合流していた。ハイトスさんが登ったルートで景鶴山には最短のようだったが、今回は与作岳もあるので県境を辿った。ここからは細尾根の雪稜となるが、先行者のトレースを追うように上がった。大きな岩を左に巻き上げるとほどなく先行者のトレースはここで消えていた。確かにピークまで僅か5m程であるが岩に巻きつくように出来た雪稜はやせ細り、岩との間は空洞になっていた。行けないことは無いが下手すれば奈落の底である。北側へ回り込むことにした。灌木帯の中で雪付きは悪く、踏み抜きを繰り返しながらやっとのことで反対側の尾根筋に乗り山頂を踏んだ。山頂の立ち木にはアイゼンの片割れだけが下がり、見慣れた黄色い山名板は根元に転がっていたので元に戻した。与作岳から1時間10分。写真は与作岳からの下り、中央は景鶴山への雪稜、右は景鶴山山頂


旧カッパ山(1892m、尾瀬ヶ原)は現在のカッパ山(1822m)の旧所在地である。景鶴山ピークの西側の山頂尾根筋にはほとんど雪は無く薮漕ぎとなった。やっとのことで下りにさしかかると今度は半端ない急傾斜である。シャクナゲ、スズタケと手当たり次第に掴めるものを手掛かりに滑り落ちるように下ると広い雪原に降り立った。当初は県境尾根筋を少し行き、カッパ山から八海山と周回するつもりだったが、まだまだ体力的に余裕があったので白沢山まで足を伸ばすこととし登り返した。この時点で16時を過ぎていたので夜通し歩き続ける覚悟をした。県境尾根筋は広く大した起伏もないので楽に歩けたが、相変わらずガスが立ちこめていたのでとにかく尾根を外さないように慎重に歩いた。お椀を付した様な広いピークに付くとGPSは旧カッパ山山頂を示していたが表示物は皆無である。広い山頂にアオモリトドマツが何本か顔を覗かせていた。景鶴山から1時間45分。写真左は景鶴山西側の密薮、中央は旧カッパ山への稜線、右は旧カッパ山山頂


大白沢山(1942m、尾瀬ヶ原)へ向かうのに尾根筋を取り違えてしまった。先を急ぐあまり次のポイントをGPSにセットしないままに歩きだしたらこの失態である。直ぐに気付いたため難なく県境尾根筋に復帰することが出来た。この先も尾根筋は広く稜線を外さぬように歩くと広い山頂となった。ここも広くあっちこっち目をやるとアオモリトドマツの高い位置に下がる山名板を見つけた。隣の木の幹には4枚の山名板が、雪面より低いところに並んで付けられていた。この位置からすると無雪期のものだが、こんなに並ぶほど薮を漕いで訪れているのだろうか? 後からまとめて取り付けられたものと想像してみたw 旧カッパ山から45分。写真左は大白沢山への稜線、中央は大白沢山山頂、右は雪の下に並ぶ4枚の山名板


白沢山(1953m、尾瀬ヶ原)への最難関はいきなり訪れた。大白沢山から西への下りは、地形図を見るとゲジゲジマークが入っているのである程度想定はしていた。ちょっとした岩場ではあるがよくよく見ると踏み跡があり慎重に下り再び雪原となった。ススヶ峰までの分岐は軽い登り勾配でその先は長い下りとなる。東側に雪庇が波打つように形成されており、ヘッ電の明かりを頼りに慎重に歩いた。登り返すのが嫌になるほどの長い下りを行くと鞍部となり緩やかな登りとなる。19時を過ぎてくると気温は急激に下がり出し雨はみぞれ混じりとなり、風も吹きだし時には斜めから吹き付けるようになった。それでも足取りは軽く、難なく白沢山に辿りついた。ここも山名表示を探したが見つけられず、GPSの示すポイントを山頂とした。大白沢山から1時間55分。写真左は大白沢山からの急な下り、中央は雪が舞い始めた県境尾根筋、右は白沢山山頂に立てたピッケル



ススヶ峰(1953m、尾瀬ヶ原)へはヘッ電に照らし出された自分のトレースを丹念に追い続けた。ススヶ峰への分岐から少しばかり登ると70m余りを下げ鞍部となる。ここからの登り返しはかなりの勾配が続いたがひたすら登り続けた。そしてその頂には中央分水嶺・ススヶ峰と書かれた山名板が下がっていた。白沢山から2時間20分。写真はススヶ峰山頂


岳ヶ倉山(1816m、尾瀬ヶ原)へはススヶ峰からの長い下りの後に緩やかに上げるだけなので左程きついところは無かった。ただ夜半となり、みぞれは完全な雪へと変わってきた。折角登り上げたピークではあるが山名板探しも程々に下山を開始した。ススヶ峰から1時間10分。写真左は岳ヶ倉岳山頂に立てたピッケル

あとは尾瀬ヶ原に向けて下るだけなのにここで大きなポカをした。何を勘違いしたか1727Pから反対側の尾根に下りてしまったのである。24時過ぎからのこの1時間はきつい時間だったが心が萎えることは無かった。ルートに復帰してからは左俣に向けて尾根筋を下ったが谷間からは雪解け水の轟音が聞こえている。ぎりぎりまで尾根筋で粘り、最後は激流をスノーブリッジで越え猫又川となった。ここからは猫又川に沿って歩き、山ノ鼻から鳩待峠に戻った時には夜は明けていた。行動時間:18時間45分。